労働金庫について解説します。
労働金庫の意味
労働金庫」とは、労働金庫法を根拠法とする協同組織の金融機関です。
全国の労働金庫が「一般社団法人全国労働金庫協会」の会員となっています。
「労働金庫連合会」が中央金庫の機能を持っています。
労働金庫の特徴
労働金庫は、労働組合や生活協同組合などが会員となり、会員の出資を受けて、営利を目的とせずに運営する機関という特徴をもっています。
直接の会員は、労働組合、生活協同組合、労働者により組織・運営される団体(共済会 ・ 互助会等)であり、団体に加入している個人は間接構成員にあたります。
該当団体に加入していない人も「ろうきん友の会」に加入するか、個人会員として出資することで様々なサービスを利用することができます。
労働金庫と銀行の違い
大きな違いは、「銀行」は営利を目的とした株式会社であり、「労働金庫」は、営利を目的としない共同組織であることです。
また、取引相手についても異なります。銀行では、企業への融資が全体の約6割です。一方、「労働金庫」では個人への融資が9割以上となっています。
労働金庫の例
労働金庫は、全部で13金庫存在しています。
【労働金庫】
北海道労働金庫、東北労働金庫、中央労働金庫、新潟県労働金庫、長野県労働金庫、静岡県労働金庫、北陸労働金庫、東海労働金庫、近畿労働金庫、中国労働金庫、四国労働金庫、九州労働金庫、沖縄県労働金庫
労働金庫の略称
労働金庫は、は略して「労金」と呼ばれることがあります。
労働金庫では、愛称としてひらがな表記の「ろうきん」を多く使用しています。
労働金庫の歴史
労働金庫は、岡山県と兵庫県の「信用組合」が始まりとなっています。
1950年(昭和25年)、岡山県では生協連の呼びかけによって、「岡山県勤労者信用組合」が、兵庫県では労働組合の呼びかけによって「兵庫勤労信用組合」が誕生しました。これらが「労働者のための銀行」である「労働金庫」の原点です。
当時は、「労働金庫法」の制定前でしたので、「中小企業等協同組合法」による「信用協同組合」として作られていました。
翌年1951年(昭和26年)には「全国労働金庫協会」が設立されました。1953年(昭和28年)には、「労働金庫法」が設立されます。
そして、全国各都道府県に労働金庫ができていきました。
1976年(昭和51年)には、労働金庫を全国統一する構想が持ち上がりますが、反対意見もあり、断念しました。
その後も統一についての話が出ますが、バブル崩壊などで実現しませんでした。
1996年(平成8年)、地域ごとに統合を行ってから、全国統合する方針となり、2007年(平成19年)には13金庫まで集約され、システムも統一されました。
しかし、2010年(平成22年)に、金融庁が合併の先送りを指示し、現在は動きが見られません。
労働金庫の近年の動き
合併の動きは止まっていますが、構想実現に向けてシステム統一が図られたため、全国どこの労働金庫でも、手数料無料で入出金や記帳が可能です。
また、ビューアルッテ、イーネット・ローソンなどのATMが手数料なしで利用できます。
セブン銀行は時間により無料など条件が各金庫により異なります。ゆうちょ銀行や各銀行・信用金庫などの他金融機関のATMでも、キャッシュバックで実質無料になる金庫も多いです。
※一部の金庫では、無料化に対応していない場合があります。一旦手数料が発生してキャッシュバックになる場合などの条件は、各金庫によります。
震災や豪雨などの災害が起きた際の義援金の振込手数料を免除にするなど、支え合いのサポートも行っています。生活応援運動として、多重債務者救済の相談会、相談ダイヤルや、住宅資金返済見直し相談なども実施しています。
国内外の協同組合組織に参加し、社会的課題の解決や平和に向けた取り組みに携わっています。
利用者目線での労働金庫
労働金庫は、地域に縛られることなく利用することができます。
また、コンビニなどのATM手数料が無料な場合が多く、普段使いに便利な金融機関です。
ATMの無料利用に、預金額などのランク条件や回数制限がないという点は、大きな特長と言えるでしょう。
頻繁に出し入れする人にとっては、特にメリットが大きいはずです。
地域により多少異なるので、お近くの金庫のホームページで確認しましょう。労働者のための機関ではありますが、退職者も「友の会」に入ることで継続して使用できます。
住宅ローン、教育ローン、フリーローンなど個人の借り入れについて、金利面では実店舗型の銀行と比べると「低めか同水準」、信用金庫より「低め」な傾向があります。
ただし、間接構成員、個人会員で金利が異なる労働金庫も多く、会員条件によって変わります。
審査については、時間がかかるという点も知っておきましょう。申し込み条件のハードルは低いものの、実際の審査は「厳しめ」という声が多く見られます。
「はたらく人の福祉金融機関」として「多重債務から守ること」を掲げていることもあり、個人にとって、無理のない返済ができそうか、判定を行っていると考えられます。
「労働者のための金融機関」という性質から個人向け融資のみの取り扱いで、事業資金としての融資は取り扱っていません。ただし、非営利のNPO事業には利用できる場合があります。
はたらく人同士の助け合い、労働金庫
労働金庫は、預金も貸出金も年々増加しており、はたらく人の支え合いの金融機関として安定して機能している金融機関です。
「金融機関といえば銀行」、というイメージの方も多いかもしれません。
個人での利用においては、労働金庫も、多くの人にとって、使い勝手のよい選択肢になるのではないでしょうか。