信託銀行とは。その意味や特徴、通常の銀行や証券会社の違い、信託会社との違いも徹底解説!

信託銀行について解説します。

 

信託銀行の意味

信託銀行は、「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(兼営法)」によって「信託業務」兼営の認可を受けた銀行です。

「信託銀行」は「信託業務」を主な業務として行います。金融庁の「免許・登録業者一覧」の業態として「信託銀行」に分類されています。

銀行名として「信託」という語を使う必要はなく、「信託銀行」と称さない銀行でも「信託業務」の兼営の認可を受けている場合があります。

信託銀行の特徴

「信託銀行」は、「銀行業務」のほか、「信託業務」、「併営業務」を行うという特徴があります。

「信託」とは、ある人が自分の財産を信頼できる相手に預け、その財産を管理・処分することで得られる利益について、与える対象を取り決めることです。また、そのための法的な枠組みを言います。信じて託す、「信託」を行う際に、利用できる機関の1つが「信託銀行」です。

「信託銀行」が行う「信託業務」には、様々な種類があります。
金銭信託業務、貸付信託業務、年金信託業務、土地信託業務、証券投資信託業務など、信託する財産の種類は、金銭だけではありません。

「併営業務」とは、「金融機関の信託業務の兼営等に関する法律(兼営法)」に定められた業務です。不動産業務や証券代行業務、遺言・相続関連業務などがあります。

信託銀行と銀行の違い

「信託銀行」では、通常の「銀行」同様に預貯金などもできます。加えて「信託業務」、「併営業務」を行っているため、「銀行」よりも業務の幅が広くなっています。

「銀行」で主に扱うのは「金銭」です。「信託銀行」では、「金銭」だけでなく、様々な財産を預けられます。「不動産」、「株式」、「遺言」や「相続」を扱うため、まとめて相談できます。

信託銀行と証券会社の違い

「信託銀行」と「証券会社」はともに証券に関わる内容の業務を扱いますが、役割に違いがあります。「信託銀行」では、個人が株を直接購入することはできません。一方、「証券会社」では、個人が株を直接売買できます。

「信託銀行」は、「投資信託」という金融商品に関わっています。「投資信託」では、投資の専門家である「運用会社」が株や債券など、どこにどれだけ投資するかを決定し、組み合わせた金融商品とします。銀行などの「販売会社」がこれを投資家に販売して資金を集め、「信託銀行」が保管します。

個人が「投資信託」を利用したい場合、「信託銀行」、「証券会社」どちらからでも、購入することができます。

信託銀行と信託会社の違い

「信託銀行」では、「信託業務」のほか、「銀行業務」や「併営業務」を行いますが、「信託会社」では、「銀行業務」や「併営業務」は行いません。

信託銀行の例
・個人向け
三菱UFJ信託銀行 みずほ信託銀行 三井住友信託銀行 SMBC信託銀行 野村信託銀行 オリックス銀行
※この記事では、主にこの個人向け信託銀行について解説しています。

・金融機関系
農中信託銀行 新生信託銀行 日証金信託銀行

・外銀系
ニューヨークメロン信託銀行 ステート・ストリート信託銀行

・マスタートラスト・再信託専業
日本マスタートラスト信託銀行 日本トラスティ・サービス信託銀行/資産管理サービス信託銀行(合併予定) 
※年金基金運営・管理や、信託会社が委託者となった資産を管理する機関

・その他兼営信託金融機関
都市銀行、地方銀行、その他の金融機関でも信託業務の兼営の認可を受けた機関が多数存在します。数が多いため、下記は例です。
三井住友銀行 りそな銀行 東邦銀行 群馬銀行 常陽銀行

【参考記事】
兼営信託金融機関認可一覧

信託銀行と信託関係機関の歴史

日本では、年貢米を商人に預けるなどの「信託」に近い行為は行われていましたが、欧米の「信託制度」が導入されたのは明治時代からです。

1905年(明治38年)、ロンドンで起債し、資金調達を行う目的で、担保附社債信託法(現在の担保付社債信託法)ができました。

1922年(大正11年)に「旧信託業法」が成立し、信託会社が免許制となります。

1943年(昭和18年)に「兼営法」が成立し、銀行との合併が進められ、50社以上あった信託専業会社は7社に減ります。

1948年(昭和23年)には「証券取引法」が成立し、銀行と証券会社が分離します。戦時国債無価値化やインフレなどの要因から、信託会社の経営が悪化します。救済措置として、大蔵省の主導で、信託会社の銀行業併営が進められました。1954年(昭和29年)には、大蔵省が普通銀行から信託業務を分離させる政策を進めました。

2004年(平成16年)に「改正信託業法」が施行されました。知的財産権等を含む財産権一般の信託が可能となり、金融機関以外の事業会社の参入が可能になりました

信託銀行の近年の動き

信託業法の改正では、著作権や排出量など、新しい信託が定められました。

また、低金利が続き、高齢化社会を迎える中で、「信託業務」の新たな形を探る動きが見られます。地銀と手を組み、地銀を代理店として、「信託業務」を提供し始めた銀行もあれば、個人向け融資から撤退した銀行もあります。

新たな分野の財産として個人の「情報」を預かり、運用するビジネスの検証も行われています。認知症の方の代理人が、スマホで契約者に代わって預金引き出しを行える仕組みの商品が登場しています。社会の課題に合わせて、変化していくことでしょう。

利用者目線での信託銀行

「信託銀行」を利用する魅力は、「信託」ができること、多様な財産についてトータルで相談できることです。と言っても、「信託」という言葉に馴染みが薄い方や、意味を初めて知った方も多いことでしょう。

今は預ける資産や、遺す相手が思い当たらないという方でも、どんな銀行か、知っておくことは有意義です。

「銀行業務」の面では、金利が高めの定期預金が用意されていることがあります。住宅ローンなど個人向け融資については、都市銀行と比べても「金利が低い」場合があります。「審査は厳しめ」と言われています。

「信託銀行」を使うのは、莫大な資産を持つ人だけではありません。昨今「終活」という言葉が定着し「家族が揉めないように、節税も兼ねて生前に…。」とコツコツ貯めてきた資産の相談に利用するケースも増えています。

子や孫の教育資金や結婚、子育てに関する資金援助、障がいを持つ家族の財産管理などを目的とする信託については、一定の金額まで非課税になるなど、税制上の優遇措置があります。また、家族をもたない選択をした場合も、社会貢献や、自分用年金としての「信託」も可能です。

「投資信託を始めたいけど、対面で相談できる機関は?」と考えている方は、「信託銀行」も視野に入れてみましょう。管理機関を1つにまとめられるというメリットがあります。

信託銀行の新しい動きに注目

「信託銀行」では、新しい動きが見られています。資産家の使う銀行、というイメージをもつ人もいるようですが、方向性によっては、多くの人にとって、身近な機関になっていく可能性が感じられます。今後の展開に注目していきましょう。